読書感想

アドリアン=レーヴェルキューンと、彼と契約を交わした「エスメラルダ蝶のような女」
トーマス・マンの 『ファウスト博士』 再読。
至高の芸術のために“悪魔と契約を結んだ”天才作曲家、アドリアン=レーヴェルキューンの、破滅と没落の物語。
ここで 芸術のために悪魔と契約を結ぶ とは、
梅毒もちの娼婦と一夜を契る という解釈なんだから なんかもうぶっとんでるよね。
やはり、トーマス・マンの発想力非凡すぎというか
トーマス・マンは天才です。 (←何度目?このセリフ)
今の時代では、敬虔で冷静なやりかた、まっとうなやりかたではもはやどんな作品もできず、悪魔の助けと釜の下の地獄の火がなければ、芸術は不可能になった。…人間は、地上をよりよくするために、地上で必要なものをぬかりなく手配したり、美しい作品に再び生命の基盤を与えてぴったり調和するような秩序を人々のあいだに作り出すよう思慮を尽して行動したりする代りに、よく課題を怠けては地獄の酒に酔いしれるのです。こうして、人間は魂を棄てて皮剥場にやってくるのです。
長かった・・・1月から読み始めていま3月か。本編は文庫本3冊程度なんですが。何しろストーリーに直接関与しないとこでの寄り道が多い多い。そのうえ内容が難解で・・・
(ドイツ人の抽象的観念、民族論・国家的陶酔、又、第一次世界大戦を通してファシズムへと傾斜していくドイツの国民的狂気、などなど) (マンのアメリカ亡命中の作品ということもあって反ナチズム的色合いが濃い 初読は大学1、2年のころ。高校時代、『魔の山』に感化され以来、国内で手にはいるトーマス・マンの作品はあらかた読みました。
当時内容をあまり理解できなかったのをずっと悔いていたので今回再読したのですが・・・日本人がこの小説を(本質的に)理解するのは無理かもと思いましたよ。マンが「海外で翻訳版が出されても、ドイツ人にしか理解できないだろう」と言っていたように。
とはいえ世界大戦におけるドイツ人の“罪”を、悲しみを、どうとらえるのか、などは、わずかに解った気がする。国民の希求したものがなんだったのか、も。
そういう意味でトーマス・マンはドイツという国を、国民を代弁している作家なのだな、、、と。
日本にそういう 国家を代表できる作家がひとりもいないのは遺憾ですね。今後もきっとああいう天才は出てこないんだろうなあ・・・。
あと、もともとマンが芸術、とりわけ音楽に造詣の深いことは明白でしたが(『魔の山』や『ブッデン・ブローグ家の人びと』でもそう。)、ついに大好きなクラシック音楽をテーマに小説書いてやったぜ!って感じですね。。w
音楽理論に関する部分は流し読みでも、まあ、問題はなかったです(理解できればもっと楽しめたんでしょうけど)。
アドリアン・レーヴェルキューンの作曲した音楽は、どんな曲なんだろう、聴いてみたいな~★とわくわくしましたv
特にオラトリオ≪デューラーの木版画による黙示録≫や、カンタータ≪ファウスト博士の嘆き≫は。
そう感じさせるマンの描写力は、さすが老練の熟達したワザといえます・!
全体にデモーニッシュ、悪魔的な作品が多いようですが、芸術としてレヴェルの高いことと悪魔的であることは切って離せない関係があるとマンは考えているみたいです。
(
『ワイマルのロッテ』でも、ゲーテの悪魔性を神性の一面であるとしたように)。
芸術論では、“芸術は悪なのか、実生活と芸術は両立可能なのか” これは『トニオ・クレーゲル』以来の議題ですね。
1・2巻は物語の進行が遅く(形而上学的な内容がかなり占めていたので)大変でした(特に2巻、アドリアンと悪魔との対話、、 / 泣) が3巻に入って急にストーリーが展開したので、最後は早かった。
外界との交流をずっと絶ってきたアドリアンが 自分の最期を見守ってもらいたいと、友人・知人をプファイフェリングに集める場面にはほろっときました・ ピアノの前で倒れて人間を失ってしまった末路には心ひきさかれる思いです。救いのない物語と解っていても精神的ダメージがでかすぎる~(;_;)
あと (けいそつで、すいませんが)
★腐女子として★「これはあとでブログに書こう・・!」とちょっと興奮しながら思ったのは
トーマス・マンの ホモ・セクシュアリティー がかなり色濃く感じられる作品だったな・・・・ という点ですかね・・・
(
『ヴェニスに死す』という世界名作ホモ劇場があるじゃん、何を今更?って思うかもしれないけど) (『魔の山』でも『トニオ・クレーゲル』でもそういうの、ありますが、)
絶望と破滅の地獄(インフェルノ)へと転落していくアドリアンを、少年の頃からずっと、大切に思って深く愛していた、親友ゼレヌス・ツァイトブローム(←奥さんいますけど、でも)、男同士の友情って恋愛を超えた深い絆があるんだろうな、と・・・
それに、アドリアンとルーディー・シュベールトフェーガーの関係は、(マンはなにやらお茶をにごすような書き方してたけど) 明らかにただの友情とは異質な物のように扱っていたよね・・・。
“ルーディーの小妖魔めいた魅力でアドリアンを誘惑~うんぬん”、とか (ルーディーとアドリアンの関係について)“妖しい関係”、とか、とか…腐った女子の煩悩を刺激するなにかがあったw
ダラダラ書いていたら随分ながくなってしまった~
読了後ややしばらく放心状態だったというか アドリアンの哀しい運命のこと考えると心が裂かれるようで
この情熱をブログで吐露したかったのです; 幾分スッキリした。
ひさびさに読み応えのある、すばらしい作品でした★
ファウスト博士(上) (岩波文庫 赤 434-4)
ファウスト博士(中) (岩波文庫 赤 434-5)
ファウスト博士 下 (岩波文庫 赤 434-6)
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