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Les Confessions

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カラマーゾフの兄弟★東大シンポジウムへいってきた。



亀山郁夫訳『カラマーゾフの兄弟』完結記念シンポジウム
シンポジウム<ヴィヴァ、カラマーゾフ!>
-ロシア文学の古典新訳を考える-



ドストエフスキー, 亀山 郁夫 / 光文社(2006/09/07)
Amazonランキング:61位
Amazonおすすめ度:
作品自体が偉業、翻訳も偉業
訳は新しくとも、原作はやっぱり古い。
新訳が出るって素晴らしい



さて…売れに売れた新★亀山郁夫訳(23万部+増4万部)『カラマーゾフの兄弟』が社会現象を起こしている昨今でありますが、そんな中さる22日東京大学文学部ではカラ兄(カラマーゾフの兄弟)シンポジウムが催されました。
国内のロシア文学の権威中の権威が集結し、名論卓説、滾滾として尽きない夢のシンポジウム(…じっさいあのようにゴージャスなメンツでドスト文学シンポジウムを開催することは、ほぼ無いんだそうです。)でしたよ。
220席が満席+立ち見客がでるほどの盛況ぶり。かく言う私も、三時間立ちっぱなしの聴講でしたが、パネルディスカッションのおもしろさに熱中するあまり時間がたつのを忘れていました。
とっても興味深かったのでメモをとりながら聴講しましたよ。
記憶の鮮明なうちに、シンポジウムの内容をちょっと あと所見などを記しておこうと思います。

続きを読むで。

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荘厳にたたずまう東京大学図書館。中もスゴイです、明治時代の華族の屋敷のように贅を尽くした内装なんですよ。カード持ってないと入れてもらえないけど。

さて、シンポジウム。前半の部は四人の権威によるパネルディスカッションでした。

~前半の部(14:00-15:40)~

浦雅春先生・・・東京大学ロシア文学教授。ゴーゴリの『鼻』を落語で訳すというザンシンきわまることをやってのけた方(大阪出身なのでお笑いが大好きだとかww)。チェーホフの専門家。

望月哲男先生・・・北海道大学ロシア文学教授。トルストイの『イワン・イリイチの死』や『クロイツェルソナタ』を訳す。篤実そうな方だ。

安岡治子先生・・・東京大学ロシア文学助教授。ドストエフスキー『地下室の手記』を訳す。ウディ・アレンがダイエットの本で『地下室~』の冒頭をパロったって、マジですかぁ 笑

沼野恭子先生・・・NHKロシア語会話講師。トゥルゲーネフ『初恋』を訳す。ダンナ様は沼野充義(東大教授。東欧・ロシア文学研究者。後半の部で出てくるよー)


…浦教授が目立って異色でした(笑)
ロシアの古典文学を、関西弁まじりの落語で訳すというその試みからして ただ者でないことがわかります。しかし浦教授の仰る「翻訳者としての透明性」は興味深かった。
それから望月教授。トルストイの与える負の印象は私もかねがね抱いておりました。トルストイってこーいったらナンだけど、説教くさい。それと自分の意見を相手におしつけるし(『人生論』はショックだった)
道徳に関して明確な意見をもっているからでしょうが 私あまり好きじゃないんですよ;といっても読んだのは『戦争と平和』や『アンナカレーニナ』くらいですが。トルストイの本を翻訳するさい、説教くさいというマイナスイメージを、「アツい」「使命感をもった人」というプラスイメージに転化しようと骨おられたそうです。
安岡助教授は一言一言がナイフのように鋭く的確なことを仰るのでとても勉強になりました。ラスプーチンの翻訳もたくさん手がけておられます。彼女の言う「2×2=4(絶対的な道理)を否定するのがロシア人である」という言葉はまさに慧眼なのでした。
沼野先生はNHKロシア語講師でいらっしゃるためか翻訳に関して文法上の工夫などのトピックが多かったです。僕、私、おれ、わし、あたい……一人称が多彩な日本語と、一人称がひとつしかないロシア語(英語もだけど)の差異。それから明治時代の文豪・二葉亭四迷の偉業をたたえるとともにその訳に懐疑的でありました。私、じつは二葉亭の小説が大好きで(…『浮雲』は坪内逍遥『当世書生気質』をうわまわる、言文一致の完成という意味で近代日本文学の嚆矢だと思います)、…そういう点からも興味深く聴講させていただきました。






もっと書きたいことあるんですけど、時間がせまっているので次いきますね(^^;



~後半の部(16:00-17:00)~

沼野充義 × 亀山郁夫 対談

仔細におよばず。トピックを箇条書きでまとめ

①なぜ亀山郁夫の新訳がこんなに売れているのか?翻訳は「リズム」が大切 会話重視

②カラマーゾフの兄弟に含まれるテーマ「父殺し」の踏襲~~亀山郁夫は「父」=原卓也(前世代露文学翻訳者)を殺している?

③日本におけるロシア文学者の先駆者たち。明治の文豪:二葉亭四迷、森鴎外、内田魯庵、昇 曙夢、~太平洋戦争の前後:米川久雄、江川卓、原卓也 ~現在まで

④新訳こぼれ噺 意図的な誤訳←!!リーズたんの 「あの」 セリフ★

⑤未完の『カラ兄』。第二部(後編)の展開、大予測!

⑥ドストエフスキーの半生と『カラ兄』の奇妙な類似性

⑦ドストエフスキーは二枚舌(BY沼野充義)ニヒリストを否定しながら彼自身にニヒリズム的パトスが存在するというアンビバレント

⑧現代~グローバリゼーション~と『カラマーゾフの兄弟』


…べつにこの項目ごとに討論したわけではありません。もっと雑多に好き放題、語り散らしている印象を受けました。

私自身の感想では、③と⑤がもっとも好奇心をそそられる内容でしたね。

●③について●

ロシア文学って他のどの国よりも、初期(明治)の日本の文学に影響をあたえてるんですよ。

上記のように日本の著名な文豪にロシア文学者は大勢いました。森鴎外はロシアでなくドイツ専門家でしたが…(軍医だったしドイツに留学してたし)…クライセヴィッツの『戦争論』は、森鴎外が訳して陸軍に提出したと記憶します。ここは文学よりもむしろ戦争史に関連することですが。
鴎外は、ドイツ語で書かれたロシア文学を日本語訳していたんですよ。
二葉亭四迷はおそらく日本初の生粋の露文学者ですね。あと、討論には出ませんでしたが、徳富蘆花はトルストイ信仰で、彼を慕って会いにまで行ったことがあります。
内田魯庵がロシア文学者だったというのは初耳。魯庵の『社会百面相』は、痛快な社会批評論でしたよ。

昇 曙夢(のぼり しょうむ)は…すみません;はじめて耳にする名前です・・・
沼野教授によると、あまり知られていないがとても優秀なロシア文学者だったそうです。
こんど著書を読んでみます。

●⑤について●

後編ストーリー予想は結構いろんな方がやっておられて、さまざまな学説が流布されているのはかなり周知の事実です。

あの清純天然受け(←やめい;)アリョーシャたんが、後編では社会主義の左翼テロリスト集団の頭領になって皇帝暗殺をもくろみ 最後は断頭台のツユと消える という、かなり飛躍した説がけっこう支持されてますからね。もう何がなんだか!メチャクチャだ!ドスト氏の墓ほりかえして後編のストーリーをお教えいただきたいものだ。答えられるわけないけど。死人に口なしとはこの事ですか?つくづく、未完のままのご逝去が悔やまれます。

で。カラ兄を翻訳するうえでどうしても
後編のストーリー展開を予測しながらの翻訳にならざるをえない
んですよ。ようするに存在しない後編に忌避できない重みというか重要性があるんです。ここがカギになっているのです。

たとえば、前編でリーズ(リザヴェータ・ホフラコワ)が、ドアに指をつめるシーン。
これはスメルジャコフの去勢願望と呼応しているマゾヒスティックなシーンで
この部分が後編へとつながる重要な布石となっているわけです。
…言ってることがわかりますか?
つまり、このシーンからリーズたんが将来スメルジャコフ的人間になる=転落するべき運命が垣間見えるわけです。

ドスト氏はこういう伏線を前編のそこらじゅうに含ませまくっているので
翻訳は訳者の予測によってずいぶんかわっていくのです。





いじょう レポートおわり!!(つかれたので、やめます。)

ギモンとか このトピックの内容を知りたい!ってことがありましたら、コメントよろしくお願いします
全部かいてるとすごい長文になってしまうので自分の好みで書きました。


長々読んでくださって、ありがとうございました★
↓お礼ほどにもなりませんが 絵でも、おいときますね。



三兄弟★朝の身支度の光景を妄想した。

ミーチャ →→ 一晩だけで、ヒゲぼーぼー。イワンに「この、野人め!」とか思われてる。

イワン →→ いっけん低血圧っぽそうだけど朝は老人並の早起き。みだしなみをキチンと整えられる子。

アリョーシャ →→ 標準的。だけど毎朝、神様にお祈りは欠かせない
「天にまします我らの父よ、きょうもボクたち家族に平和が訪れますように…(むにゃむにゃ)」




こっちは今よんでる『白痴』き●がいヒロイン(…)ナスターシャ・フィリッポヴナ嬢
エキセントリックすぎて笑える。
トーツキイ氏いわく「陵辱されたファンタスチックな女」
ラゴージンなんか女王さまだ!とかめちゃめちゃ騒いでナスターシャかついでどっか逝く(イミフ…

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トリコ
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自己紹介:
漫画・歴史・文学に無駄な情熱を浪費する可哀そうな腐女子。
趣味は文系、専攻は理系。文理両道目指してます。
近代史妄想が激しい。史実と虚実の混同注意報発令中。

:好きな政治(思想)家:
吉田松陰、大久保利通、木戸孝允、山田顕義、高杉晋作、久坂玄瑞、伊藤博文、伊東巳代治、勝海舟、福澤諭吉、浜口雄幸

:好きな文士:
トーマス・マン、ドストエフスキー、ボードレール、アナトール・フランス、夏目漱石、正岡子規、森鴎外、泉鏡花、徳富蘆花、芥川龍之介、三島由紀夫、寺田寅彦、中勘助、太宰治、織田作之助、司馬遼太郎、滝沢馬琴

:人生の聖典:
留魂録、葉隠、歌よみに与ふる書、醒めた炎、竜馬がゆく、魔の山、銀の匙、唯脳論、深夜特急、寺田寅彦随筆集

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