
ここんとこ 哲学とか教養の本ばかりで頭が疲弊しきっておりましたが
この小説により精神に一握の爽涼を得た気がいたしますです。はい。
まぁわりと何も考えずに読めてたんじゅんに面白かったなぁということなのですが
なにか、ドキリとするものがありました。 水島上等兵の言葉。
わが国は戦争をして、敗けて、くるしんでいます。それはむだな欲を出したからです。思い上がったあまり、人間としてのもっとも大切なものを忘れたからです。われらが奉じた文明というものが、一面にはなはだ浅薄なものだったからです。
……もっと欲がすくなくなるようにつとめなくてはならないのではないでしょうか。それでなくては、ただ日本人ばかりでなく、人間全体が、この先もとうてい救われないのではないでしょうか?
さらっと書いているが深い…仏教の観念から来る人類の精神救済や、功徳について考えなければ水島上等兵の言葉を真に理解することはできないでしょうね。
ところでビルマの当時の小乗仏教てどんなだったんだろうね。
■ 内容↓↓
ビルマ(今のミャンマー)に派兵されて来ていた日本兵たちの話です。
一隊の隊長が音楽大学卒業生ということもあり、何かといえば合唱したり手作りの楽器で演奏したり…
戦争しに来てるわりには和気あいあいとやっていたようです(不覚にも、なんか、トキめいた)。
ジャングルの中で不毛な攻防戦を繰り広げているうちに、日本の敗戦を知った彼らは、敵軍に潔く投降する、とここまではいいのですが
水島上等兵だけひょんなことから行動を別にすることになります。
それ以後かれは消息を絶ってしまうのですが、実は……
という話。(奇想天外なストーリーなのでネタバレは避けます)
戦後日本……焼け野原になった大都市の、飢えた子供たち。
食糧欠乏、闇市と娼婦が氾濫し、米軍の占領下、みんなが不安にいっぱいで「日本はどうなってしまうんだろう?」とおびえていた時代…
そんな時代に日本人の誇りと勇気を取り戻すために
また「若い屍(かばね)を異国にさらし、絶海に沈めた人たち」のために
作者はこの作品を書いたのだと、言っておりました。
当時の日本人は、日本の子供たちは、この作品を読んで何を感じたのでしょうか。

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